ストリングス・アレンジ講座 第3回 「ストリングスらしさを出す!①」
プロ直伝!ストリングス・アレンジ講座
〜ポップス(歌もの)にストリングスを入れよう!〜
講師:小谷野謙一
第3回:”ストリングスらしい”アレンジのコツ①
前回は、4リズムの中の一役割としてのストリングスのアレンジを解説しましたが、
今回は、アレンジの中で、ストリングスに重要な役割を持たせてみましょう。
役割が増えれば、より”ストリングスらしいアレンジ”ができます。
ここからがストリングス・アレンジの真骨頂ともいえますよ!
★伴奏にアルペジオの動きを付ける★
ストリングス・セクションには、4つのパートがあることをこれまで解説してきましたが、
この4パートを使って、アルペジオ(分散和音)を演奏するバッキング法があります。
アルペジオの音型には様々な形が考えられますが、
基本的にはピアノ(キーボード)や、ギターによるアルペジオをストリングスの4パートに振り分けて演奏すると考えてOKです。
まずは、その曲想にフィットするアルペジオを考えたら、
それを音域ごとに4つに分解し、ストリングスの各パートに割り当てれば、出来上がりです。
下の図にはCメジャーコード(ド・ミ・ソ)でアルペジオを作りましたが、
2ndヴァイオリンに9th(レ)の音を入れて、滑らかさを盛り込んでいます。
★”駆け上がり”を使う!★
ストリングスを使ったメロディや、対旋律(オブリガートや裏メロ)を、
効果的に引き出す方法の一つに、「駆け上がりによる導入」という技があります。
特に高い音域で始まるメロディで始まる場合は、
その直前の数拍を使って、音域を駆け上がる様なフレーズを入れると、
勢いが出るのと同時に、メロディが引き立ち、スムーズな流れを生み出せます。
上の図で、1st.Vnのみ、1拍分、細かく駆け上がっているような
フレーズが有りますが、これが「駆け上がり」です。
とてもストリングスらしいアレンジ法の一つです。
また、この「駆け上がり」を滑らかにかつ、
素早い動きとして聞かせたい場合は、
7連符、9連符、10連符、11連符、13連符、など4で割り切れない連符を使うのが
コツです。上図の駆け上がりも9連符を使用しています。
更に、駆け上がりは、その「行き先」をしっかり想定して導入する事も大切です。
1st.Vn と 2nd.Vnがオクターブでメロディを演奏するようなシーンの直前では、
駆け上がりもオクターブになり、
行き先が3度や6度でハモっている場合は、
その音程幅でハモりながら駆け上がりをする例も良くあります。
★4声を絡ませる、プロっぽいアレンジ!★
ストリング・スセクションにおいて、その響きの美しさを最大限に引き出せるのは、
4声(パート)によって生み出される、ハーモニーと言えます。
特に、それぞれ違った動きを持ちながら、
1つのハーモニーを紡ぎだすサウンドは、ストリングスならではの魅力です。
これは、曲中のどこでも使える、重要なテクニックです。
下図にサンプルを作ってみました。
これは、4声それぞれが、絡みながらハーモニーを作っているのが
分かりますね。
一方で、次のサンプル(下図)は、各パートがVc→Vla→2nd.Vn→1st.Vnの順に
登場して徐々にハーモニーが作られているのが分かります。
さて、いかがでしたでしょうか?
ストリングスのアレンジには多くの方法と可能性がある事が解って頂けたかと思います。
ストリングス・セクションを使いこなすには、
まず、それぞれが4パートで構成されている事をイメージする事が大切です。
その上で、第1回と第2回でご説明した、「白玉」を鳴らすのも良し、
「下3声はコード、上1声はメロディ」と、役割分担をするのも良し、
そして今回扱った、「4声によるハーモニー」を作るのも良しです。
さまざまなアイディアでチャレンジしてみて下さい!
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